「使えない筋肉などない。使い方が下手なだけだ」
いわゆる「使えない筋肉論争」に終止符を打ったかに見えるこの名台詞ですが、実際問題筋トレばかりしていると「使えない筋肉」になるリスクはあるようです。
特にボディビルダーが大好きな「軽い重量でも筋肉を意識して効かせる」トレーニングは、使い所に要注意。効かせる事ばかり意識するより、問答無用で重量にこだわった方がいい場合もあります。
今回は「効かせる筋トレ」のデメリットと、その使い分け方について解説します。

・認定ダイエットインストラクター
・医薬品登録販売者
・健康管理士一般指導員
健康一筋発信10年。ダイエットや筋トレに役立つサプリメントの他、健康情報も収集し続けてアップデート中。自分と家族と日本国民の健康と幸福(ウェルネス)を追求するのが仕事であり趣味です。
効かせる筋トレは運動神経を悪くする
2018年のある日Twitter上で、現代思想家・合気道家の内田樹氏、ラグビー元日本代表の平尾剛氏、武術家で身体運動研究者の甲野善紀氏らが、相次いで「脱筋トレ論」を展開していました。
いま子どもたちに要求されているのはもっぱら「粗雑な動作の反復」です。「粗雑な動作」というのは「随意筋を機械的に動かす動作」のことです。子どもたちは胸鎖関節の操作、重心の移動、骨盤の旋回、臓器の上げ下ろしというようなことを意識的に訓練する機会がないのです。気の毒なり。 https://t.co/luPFXoPp1Q
— 内田樹 (@levinassien) August 30, 2018
本当にこのことは、現在ではどれほど声を大きくして言っても言い足りない思いです。「筋トレ」の問題は、以前招かれて千葉大の医学部に行った折に、そこの研究でも動作が不器用になるという結論が出ているとの事でした。
https://t.co/EAfRdVTj65— 甲野善紀 (@shouseikan) August 30, 2018
つまり「筋トレ」は筋肉に過大な負荷をかけ、身体を下手に使う練習をセッセとやっていることになります。なぜこんな簡単なことを多くの人が理解しないのか、本当に不思議です。これは「科学的」以前の「論理的」に考えれば、ほとんどの人が理解できることだからです。
— 甲野善紀 (@shouseikan) August 30, 2018
千葉大医学部の研究で、筋トレを繰り返すと動作が不器用になるとのことでしたが、この論文は見つけられませんでした(引き続き探します…)
しかし考えてみれば当然の話しで、筋トレは身体を下手に使う練習なのです。
身体の使い方を下手にする練習
人間の脳は、一つ一つの筋肉を意識するようには出来ていません。脳が意識するのは、実際の動作です。
例えばバーベルを持ち上げる際、脳はなるべく全身に負荷を分散して、全身の筋肉を連動させて最大のパワーを発揮しようとします。
しかし「効かせる筋トレ」では、例えば大腿四頭筋だけを意識するために上体をまっすぐ立てたり、広背筋に効かせるために股関節の動きを封印したり、筋肉の反動を使わないためにあえてゆっくり動作したりしますよね。
これでは「全身の筋肉を連動させて最大のパワーを発揮」するのが、下手になって当たり前です。
世界トップのトレーニングとは
ちょうどこの話をまとめていて思い出したのですが、私の趣味であるサッカーでも、似たような話がありました。
前述の3氏の意見は、「今の子供は走り回って遊ぶ場所がなくて機能的な動作を練習できない」という問題提起からスタートしていますが、これは日本だけではなく多くの先進国で共通の問題です。
特に日本よりも国土が狭くて人口密度の高い地域では、「子どもが自由に遊ぶ場がなくて運動神経が育たない」のは深刻な社会問題となっています。
そんな国の代表格でもあるオランダ。そのオランダの超名門サッカークラブであるアヤックスでは、小学生年代の子供達に、なんと柔道を教えていました。
どうしてサッカークラブで柔道を?
と思いますが、これこそ冒頭の3氏が提唱するような「筋トレではなく身体を上手に使うためのトレーニング」として最適だからでしょう。
つまり昔の子どもなら走り回って木登りでもしてれば自然に身についた運動神経が、今の子は弱っているので、トレーニングの一環として柔道をする事が結果的にサッカーにも直結するという訳です。
このような機能は、粗雑な動作の繰り返しである筋トレでは、決して身につきません。
効かせる筋トレのメリット
「効かせる筋トレ」のデメリットばかり書いてしまいましたが、もちろんメリットもあります。
要はデメリットとメリットを理解して、目的に応じて使い分けるべきなんですね。その「効かせる筋トレ」のメリットとは、主に以下の2つです。
- 筋肉を増やすには効率最高
- 軽いので怪我のリスクが少ない
筋肉を増やすには効率最高
効かせる筋トレは、一つ一つの筋肉を意識してピンポイントで効かせる訳ですから、当然一つ一つの筋肉を鍛えて増やすには最も効率が良いです。
特に私が指導しているクライアントさんたちは、運動不足で筋肉量が絶対的に足りない方が多いので、こうした初心者の方が最短で筋肉を増やすのなら、まず効かせる筋トレを覚えるべきでしょう。
また一つ一つの筋肉を鍛えることが最終的な目的であるボディビルダーにとっては、効かせる筋トレこそが競技上必要なトレーニングとなります。
軽いので怪我のリスクが少ない
初心者にとってもう一つの大きなメリットは、効かせる筋トレは軽い重量でもしっかり鍛えられるので安全であるという事です。
持ち上げるダンベルが重くなるほど、ふとした拍子に腰や肩を痛めるリスクは高まります。私も床においてある26kgのダンベルを持ち上げる際、一瞬気を抜いたばっかりに腰をグキッとやった事があります(泣)
「効かせる筋トレ」は筋トレ初心者とボディビルダーに有効
そもそも筋肉の絶対量が足りない筋トレ初心者は、安全に効率よく筋肉を増やす方法として「効かせる筋トレ」が非常に有効です。
「効かせる筋トレ」などと難しく考えなくても、マシンに身体を固定して反動を使わずゆっくり動かせば、大体は効かせる筋トレになりますね。ダンベルやバーベルでも似たようなもので、ゆっくり丁寧に動かすことを意識してみましょう。
そしてボディビルダーにとっても、効かせる筋トレは欠かせません。
ボディビルダーについては何かにつけて「使えない筋肉」とイチャモンを付けられますが、ボディビルダーはボディビルの大会に出るために筋トレしているのだから、それ以外の用途など知ったこっちゃありません。
ボディビルの大会で勝てる筋肉が、ボディビルダーにとっての「使える筋肉」です。
室伏やボルトに「持久力がないから使えない筋肉」なんて言うバカはいません。逆に陸上選手がボディビル大会に出てきても、箸にも棒にもかからないでしょうね。
筋トレは目的を理解して行うのが大事で、目的にあった筋トレが「使える筋肉」を作るのです。
重量・動作にこだわった筋トレで使える身体を手に入れよう
もし筋トレをしていて、なるべく「使える筋肉」を目指したいのであれば、ある程度重量にこだわったトレーニングをしましょう。
一つ一つの筋肉に効かせるのではなく、全身の筋肉を連動させてマックスパワーを出すようなトレーニングをすると、全身の連動性が高まり、あらゆるスポーツにとっても有効な身体を作り上げられます。
またこうしたトレーニングをしていると一つ一つの筋肉が無駄に肥大しすぎないため、バランスの取れたアスリート的肉体になりますね。多くの人は、ボディビル的な肉体よりアスリート的な肉体をカッコいいと思うでしょう。
具体的には高重量のスクワット、デッドリフト、ベンチプレス、ミリタリープレス、そして自重トレーニングでは懸垂、ディップス、レッグレイズ、腹筋ローラーなどが良いと思います。
さらに究極的には、クリーン、スナッチ、ジャークなどのクイックリフト系が最強と思います。クイックリフトは練習できる環境がなかなか無いですが、身体能力を高めるトレーニングとしてはこれ以上ないほど効果的ですよね。
効かせる筋トレはデメリットもあるが使い所が大切
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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